2008年1月23日水曜日

21 Jan.2008














現在開催中の個展「想起 〜アドルフ・ロースへの手紙〜」の準備風景。

21日のオープニングには少人数ながらも建築家、彫刻家、オペラ歌手、詩人、母…と多種の人々が集まってくれた。

以下にテキストを掲載します。



我々が森の中を歩いていて、シャベルでもって長さ6フィート、幅3フィート程の大きさのピラミッドの形に土が盛られたものに出会ったとする。我々はそれを見て襟を正す気持ちに襲われる。そして、それは我々の心の中に語りかけてくる。「ここに誰か人が葬られている」と。これが建築なのだ。
                    アドルフ・ロース「建築について」(1908)

墓標のない墓は
その場所に“誰か”が眠っていることは語っても
“誰が”眠っているかは語らない。

何かを語ってはいるが、具体性を欠いている。
つまりその墓は、何らかの余白を宿している。

芸術と呼ばれる全てのものは
この“余白”を内包するために
存在しているのではないだろうか。

鑑賞者は
作品の創り出すその空虚な余白に
過去の記憶や体験を援用しながら
身体そのものを滑り込ませ
自身の物語を完成させ
新たな記憶の引き出しにしまう。

もはやそこには作家は存在せず
鑑賞者の紡ぎ出す物語だけが残るだろう。

その過程における想起とは
“語らない余白”を語るための、そして
“見えないもの”を見ようとするための
小さな契機にすぎない。

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